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同窓生コラム

イタリアインターンシップ紀行① US14武田敬子

イタリアインターンシップ紀行① US14武田敬子

US14武田です。
2017年の晩夏、イタリア・シエナにて行政書士としてインターンシップを経験し、そのときの体験談を行政書士会の会報に3回に分けて寄稿したので、これを共有したいと思います。

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同窓生コラム イタリアインターンシップ紀行①

イタリアにある移民専門弁護士事務所で1か月半インターンシップの機会を得た。海外は旅行の経験はあれど住んだことはない。旅行とは違う発見もたくさんあった。滅多にないインターン経験なので感じたことを数回にわけて綴ってみたい。数冊イタリア関連の本を読み、検証できたところ、できなかったところもあるが、基本は個人的雑感なので、そのつもりでお読み頂ければと思う。

★ワインとオリーブで有名なシエナ


イタリア王国成立は1861年、たった156年前だ。それまで戦いの連続であった。水の都ヴェネツィア、芸術の都フィレンツェ、ローマなど個性的な都市国家の流れを汲み、20の州があり、州の自治権が強い。
シエナはトスカーナ州に属し、約44,000人が住む城塞に囲まれた丘の上の都市である。州都フィレンツェから車で1時間ほど南に位置し、乾いたオリーブと葡萄の緩やかな丘陵が見渡す限り広がり、大きな丘の上にはシエナのような城塞のある町ができ、小さな丘の上にはワイナリーが1軒づつ建っている。「バローロ」と並ぶ高級赤ワイン「ブルネッロ」と「キャンティ」の産地でもある。

★入国審査

入国審査の際、ビジネスで来たというか、観光で来たというか迷ったが、ローマの入管では何も聞かれることはなくパスポートを見せるだけだった。審査用ブースはたくさんあるが、審査官がいるブースは少なく、長い列に並び1時間ほど待った。後で確認したらイタリアとのVISA免除国は180日のうち90日以内であればVISA無しで滞在でき、会議や打合わせなどビジネスと言って良いようである。VISA無しでの滞在で報酬をもらってはいけないところは日本と一緒である。
帰国時は航空会社により出国ゲートがA-D ZoneとE Zoneに分かれた。A-DとEなんてA-Dの方がどう見ても多くバランスが悪いだろうと思ったが、出国審査の長い列に並んでいると、途中で職員がパスポートをチェックしていた。パスポートが日本、韓国だと列をはずれ空いているブースに誘導され、中国パスポートではダメと言われていた。イスラム系の人も列に多く残っていたので、日本のパスポートはテロには関係ないと思われているのか、信頼性が高いと思ってもらっているのかわからないが、日本国籍で良かったと思った。海外にいるとそう思うことは多々あり、先人のおかげだと有難くなる。
私はカタール航空を使いE Zoneだったが、イスラム系の航空会社はE Zoneにまとめられ、E Zoneだけ時間がかかるため1つのZoneだったのかもしれない。

★イタリア語仕様のパソコンに焦る

インターンの仕事は翻訳とマーケティングが主で、パソコン(PC)は会社備え付けのものを使う。日本語入力は可能だが、Wordなど はイタリア語。修正履歴の保存、ページ挿入、ホーム画面の設定など全てイタリア語で、日本語Word上とタブ位置はほぼ一緒のはずと、タブを押しても、どの言葉が修正履歴の保存に該当するかわからないため、Googleの伊日翻訳に頼りっぱなしだった。タブのコピペができれば翻訳も簡単だが、できないのでいちいち手入力する必要があり、日本では簡単にできることに時間と手間を費やした。キーボードもイタリア語仕様のため、日本語入力にすると例えばキーボード上の’&’を押しても’&’は出てこないで違う文字が入力される。日本語を英語入力に切替えるつもりでキーを押すと違う画面が開いたり、画面が拡大したり分割したりし、一人あわあわ焦っていた。
英語の翻訳では主語を全て日本語に訳すと逆に不自然になる。日本語は主語がなくても通じること、個が主張する文化と集団が優先される文化の違いを感じた。単語の順番なども日本と違い、この違いを理解していないから自分が伝えたいことが外国人に伝わっていないと感じることがあるのだと改めて認識する良い機会となった。
イタリア人は話好きでなかなか仕事しないと聞いたが、その事務所は皆忙しくPCに向かい、15時くらいになると帰る時間を意識してか会話もないくらい静かになるときもあった。就業時間は9時―18時。女性が約7割を占め、終了後子供を迎えに行き、夕食の支度のためほぼ皆定時に帰る。金曜はもうすぐ週末とうきうきするのか、週初めに比べて雰囲気が和やかに感じた。

★イタリアの労働許可

イタリアで働くには①労働許可をイタリア移民局に申請、②申請人の住所を管轄するイタリア領事館にVISAを申請する。労働許可は日本でいう認定証明書のような位置づけだ。③入国後8日以内に移民局で滞在契約(仕事の期間や条件を確認する)を締結または郵便局で滞在許可を申請する(労働許可の種類により異なる)。④警察で指紋採取し、⑤滞在許可証を受領する。⑥滞在許可が出たら住民登録をする、という一連の流れとなっている。
日本と違うのは関係官庁が移民局だけでなく警察や郵便局も関わるところ、指紋採取が義務付けられているところだ。
面白いと思ったVISAが2つあった。一つは新しい投資VISAで、100万~200万ユーロ(約1億3300万~2億6600万円)をイタリアに投資すれば滞在許可を得られるというもので、働かなくても賃貸収入や配当などで十分に生活できる資金があること、適切な住居がイタリアに確保されていることが条件だ。このVISAは税制優遇が受けられることが売りで、海外の所得金額に関わらず、年額10万ユーロ(1330万円)の税金を払えば、海外資産の報告義務と相続税が免除される。年額10万ユーロの税金を払う方が安い人とは、一体いくらの総資産を持つ人なのか?。
イタリアの所得税は累進課税で7万5,000ユーロ超で43%の税率だ*1。他に住民税などもかかるがそれを考慮しなければ232,558ユーロ(約3070万)の年収があれば10万ユーロの税金となる。3070万の年収を得るには10%リターンを得られるとして3億ほど資産があれば良いだろうか。欧米の富裕層がイタリアに移住ということは考えにくいので、もし投資するとしたら中国やロシア等の国籍の人だろう。1億以上の資産を持つ富裕層は中国に361万人おり、ロシア他の国籍も加えると、ターゲットとしては少なくないと言える。*2
もう一つはStart up VISAといい、革新的な事業を起こす人は5万ユーロという少額の投資で起業でき、かつ起業までに1年の猶予を与えるというものだ。革新的製品やサービスとして具体的にはビットコインの 差額取引交換システムの作成、イタリアファッションのeマーケット化などが今まで許可されている。*3 日本の在留資格も最近、建設業や日本食料理人の分野で国交省、農水省等他省庁に事前申請してから入国管理局に申請するものが増えてきているが、このStart up VISAも経済開発省にまず申請をし、革新的と認められれば領事館のVISA申請へと進めることができる。イタリアがどういう外国人に来て欲しいかを明確に政策に反映したVISAだと感じた。
イタリアはシェンゲン協定に加盟しており、シェンゲン加盟国(EU+4か国)のパスポートがあれば国境審査無しで自由に行き来ができる。ブルーカードVISAという日本の高度専門職に似たVISAがあるが、18カ月たつと別のEU加盟国で働くことができ、5年後永住権を申請することができる。
シャンゲン協定は人と物の移動の自由を実現し、経済発展にも貢献したが、ギリシャや東欧から入った難民がイギリスやドイツに殺到し、テロも活発になったことから移民に対する批判が高まりBrexitに至り、メルケル首相の評価が下がったのは周知のとおりだ。

★イタリアの学校

イタリアは小学校5学年、中学校3学年、高校5学年、大学が3年である。ブルーカードVISAでは大学3年以上を卒業し学位を得ていることが要件の一つになっている。最初は何故3年なのかと思ったが、イタリアはもともと大学が3年制なのを知り納得した。
小学校の夏休みは3か月!もあり、小さい頃からバカンスが長いから、社会人になってから夏休みも長いのだと言う人がいた。一理あるのではないだろうか。3か月も夏休みがあったら親は大変だと思うが、夏休みも給食が出る学校もあるらしい。事務所の多くの人は親の近くに住みサポートしてもらっていた。

★Barでエスプレッソ

事務所ではランチタイム1時間の他に、午前中15分、午後15分のコーヒータイムがある。事務所では皆がPCに向かい黙々と仕事をしているので、2時間くらいたつと目が痛くなりコーヒーブレイクは息抜きに散歩に行ける有難いシステムだ。日本のような席のゆったりしたカフェは殆どなく、テーブル席の少ないこじんまりしたBarが朝早くから開いてカフェの代わりをしている。イタリアではコーヒー=エスプレッソ、一杯1~2ユーロほどで、カップは日本の1/3くらいのサイズ、コーヒーの量は変わらないのにお湯の量は少ないので、日本人は余程好きでないと飲めない。
一口、二口で飲み終えるので、殆どの客はテーブルにも行かず、カウンターで立ち飲みし、注文からBarを出るまでほぼ5分以内である。アメリカン(ロングとイタリアでは言う)、カプチーノも出してくれるが、昼食後に頼むと同僚には「えー」と言われ、バーでは「今日だけね」と冗談で言われる。カプチーノは朝しか飲まないのだ。エスプレッソは朝は目を覚ますため、食後は消化を助けるために飲むそうで、エスプレッソが消化を助けるという研究結果もあるという。牛乳は消化の負担となるので、昼食後は飲まないそうだ。

★遅い食事時間

ランチは13時ー14時の間に開始し、夕食は19時半か20時からが普通である。事務所では19時半に会食を予約すると「早い、何故20時じゃないのか」と言われるそうだ。ナポリなど南部ではもっと遅く22時開始だという。オフィスによっては13時から15時頃、レストランは15時から19時半まで昼休み、というところも多い。18時頃食事する我々には、昼休みなく営業しているレストランは貴重な存在である。
パーティの始まりも遅く20時頃集合、飲食スタートは21時!とお腹がすく。スタートが遅いので終わりも遅い。小学生の子どもも親同伴ながら深夜1時くらいまでおり、早く寝なくて明日学校は大丈夫かとこちらが心配になる。
事務所はランチタイムの13時までお腹がすかないの?と思うが、皆お腹がすくと適当にリンゴ、クロワッサン等を席で食べながら仕事をしていた。ランチはお弁当持参か家に帰る、外食は週1,2回とメリハリをつける人が多く、ランチBOXはパスタやサンドイッチに果物が定番だ。リゾットの人も多く、以外とお米も食べると感じた。イタリアでは長いタイ米のようなものを使う。
日本人がお箸を持参するようにナイフとフォークを持参しており、果物は丸ごと持参し、その場でむいて食べる。ランチ時には必ずランチBOXの下にナプキンを敷き、テーブルクロス代わりにしているのが印象的だった。ナプキンといっても会社なのでキッチンペーパーを敷くだけなのだが、食事とテーブルクロスは切っても切れない関係にあるようだ。
次回はイタリアで想像と違い驚いた話などを紹介したい。

*1 Jetro:https://www.jetro.go.jp/world/europe/it/invest_04.html
*2 https://zuuonline.com/archives/95559
*3 http://www.mazzeschi.it/
写真注釈
①シエナ。緩やかな丘陵が見渡す限り広がる
②シエナの城壁 トスカーナの丘にはこのような城壁のある町がたくさんある
③シエナの大聖堂。天国の門ツアーで普段入れない上層階に入れる
④カプチーノとエスプレッソ。朝食はクリームやチョコ入りのクロワッサンが多い
⑤ランチBox.トマトとグリンピースのリゾット

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US14 武田敬子

大手外資メーカーに就職後、自分で時間を管理したいと行政書士に。武田行政書士事務所代表。主業務は外国人の在留資格取得、帰化、契約書作成、相続など。中国、韓国、パキスタン、ミャンマー、ネパールなどアジアのお客様が8割。外国人の社長が多いことからきちんとアドバイスしたいとBBTに入学。http://visajp.com/